春を待つ間も文化会館は元気です (2011/02/04掲載)

■津軽三味線の話−門付け芸

 津軽三味線ってカッコイイと思いませんか?とりあえず弦楽器と呼ばれるものは全てやってみたいと思っているギター弾きの私ですが、中でも津軽三味線は以前から凄く惹かれている楽器のひとつなのです。弦楽器でありながら打楽器的なアプローチというか、津軽三味線のパーカッシブなフレージングはフラメンコギターのようでもあり、元々が盲人芸のため譜面がなく、即興演奏が中心となる点においてはジャズやブルースのようでもあります。そしてなにより、力強さと繊細さを兼ね備えた魂を揺さぶるようなあの音色は非常に魅力的で、和洋問わず弦楽器の中でも唯一無二の存在感を示す楽器だと個人的には思っています。そもそも「三味線」は様々なジャンルの音楽を育んできた日本の伝統的な弦楽器なわけですが、その中でも「太棹(ふとざお)」を用い、津軽の門付け芸から生まれたのが所謂「津軽三味線」とされています。芸人が家々を訪問し、門口に立って演じた芸能のことを門付け芸といい、その多くは被差別民が担い手でした。それは津軽の地でも例外ではなく、目が不自由なため唯一の産業であった農業に従事することができない人々は「坊様(ボサマ)」と蔑まれ、家々の軒先で三味線を弾き、施しをうけるという生活をしていたのです。そんな成り立ちを持つ津軽三味線だけに、奴隷制度の中から生まれたブルースにも通じるような魂の音色を持つのもうなずけるのではないでしょうか。

 さて、2月20日(日)14時30分から大館市民文化会館大ホールにて、弘前大学津軽三味線サークル大館公演を開催します…と、今回の桜町通信もしっかり宣伝しようと書き始めたのですが、とりとめない前置きが長すぎて、宣伝するスペースがなくなってしまいました。毎度のことでスイマセン。ということでこの続きはまた次回。(山)


■都響大館公演の話−小山実稚恵

 昨年10月の第16回ショパン国際ピアノコンクール。略してショパコン。数多のピアノコンクールの中でも正しく世界最高峰のコンクールです。第1位はロシアのアヴデーエワ。アルゲリッチ以来45年ぶり2人目の女性優勝者でした。

 今回はたいへんレベルが高くて、国別ではロシアの復活が印象的でしたが、他にもいくつか注目すべき事柄があります。優勝者がどのメーカーのピアノを弾くかも毎回注目されますが、今回ついに日本製のピアノが頂点を極めました。ヤマハが社運をかけて開発したCFX。このピアノ、ほんとに凄いですよ。いつか書きますね。

 もう一つの注目点は、小山実稚恵が審査員を務めたこと。小山さんは、チャイコフスキー、ショパンの2大コンクールに入賞した唯一の日本人です。ショパコンで4位とはいえ、なにしろ5位があのルイサダなんですから凄いじゃないですか。どのコンクールも同じですが、上位入賞者が必ずしも順位通りにキャリアを刻むわけではありません。85年ショパコン入賞者で今現在活躍しているのは、何といってもこの4位と5位でしょう。

 とにかく演奏者としての小山さんは今や人気・実力ともに日本最高のピアニスト。06年から始まった12年間全24回ものリサイタルシリーズ「小山実稚恵の世界」のような壮大な企画を実行できるピアニストが他にいますか(って私がいばってもしょうがないですが)。次に何を言いたいか分かりますね。絶頂期を迎えた小山実稚恵のショパン「ピアノ協奏曲第1番」(ちなみにこの曲もショパコン)は絶対聴き逃せないですよ、と声を大にして言いたいわけです。という訳で、3月9日の「東京都交響楽団大館公演」を皆さまどうかお見逃しなく。

 あ、もうひとつだけ。こんなスゴイ小山さんですが性格は優しく穏やかで、「徹子の部屋」だとかテレビで見たそのままの人です。だからあなたもきっと大好きになりますよ。(陽)